プレミアリーグに昇格した3クラブが再び全滅──かつてはあり得なかったことが、今は現実に

雨が降る中、顔を手で覆い肩を落とすサッカー選手。背景にはプレミアリーグのロゴと『RELEGATED(降格)』の赤いスタンプが押された順位表が映し出され、降格の悲哀を象徴している 海外サッカー

ついに起きた「昇格組全滅」再び。プレミアの歴史が揺らぐ

毎シーズン、プレミアリーグに昇格してきたクラブたちは、必死に残留を目指して戦い続けてきました。
通常であれば、昇格した3クラブのうち、少なくとも1クラブは1年目の壁を乗り越え、プレミアリーグに生き残るものです。

しかし、2024-25シーズン、ついに「悪夢」が現実となりました。
サウサンプトン、レスター・シティ、そしてイプスウィッチ・タウン──。
彼ら3クラブは、揃ってチャンピオンシップへの降格が決定してしまったのです。

しかもこの事態、昨季のルートン・タウン、シェフィールド・ユナイテッド、バーンリーに続き、2シーズン連続
プレミアリーグの歴史が、大きく揺らいでいます。


昇格即降格──なぜこれが「異常」なのか

「昇格したクラブが苦戦するのは当然」と思われるかもしれません。
確かに、資金力、選手層、経験値、あらゆる面でプレミアリーグの既存勢力と比べて劣る部分があるのは事実です。

しかし、歴史を振り返ると、この「3クラブ全滅」というケースは極めて稀でした。

  • 1898-99シーズンにファーストディビジョン(当時の1部リーグ)で自動降格制度が導入されて以来、
  • 1996-97シーズンまでの約100年もの間、
  • 昇格したクラブすべてが1年で降格することは一度もなかったのです。

さらに、1974-75シーズンに「3クラブ昇格・降格制」が始まった後も、2クラブ即降格すら珍しい状況が続きました。

1997-98シーズンに初めて「昇格組全滅」が起きたものの、以降の26シーズンで同じ事態は一度も発生せず。
それが、この2年連続で起きたというのは、まさに異常事態と言えるでしょう。


昨季、そして今季──「崩壊する昇格組」

2023-24シーズン、昇格組の苦しみは顕著でした。

  • シェフィールド・ユナイテッド:史上最多となる104失点
  • バーンリー:残留争いにすら加わることなく沈没。
  • ルートン:シーズン終盤にわずか1勝と力尽き。

彼らは、残留圏から少なくとも6ポイント以上離され、
3クラブ合わせてもわずか勝ち点66
プレミア史上最低の成績で降格していったのです。

そして今季──。

  • サウサンプトン:プレミア史上最速で降格決定。
  • レスター・シティイプスウィッチ・タウン:残り4試合を残して降格確定。

すべての降格クラブが4試合前に確定するのは、プレミア史上初の出来事です。
これまで、降格争いは最終節までもつれることが普通でしたから、この「早すぎる結末」は極めて異例です。

さらに、今季の降格組3クラブの勝ち点合計は、現時点のペースでいくとわずか56ポイント
これは、昨季の「最低記録」をさらに10ポイントも下回るペースです。

このままでは、
「プレミアリーグ史上最も成績が悪かった降格組」
という不名誉な称号を更新してしまう可能性が高いのです。


昇格組全滅──ヨーロッパでも極めて稀な現象

では、この「昇格組全滅」、イングランド以外でも起きているのでしょうか?

実は、ヨーロッパ主要リーグではほとんど例がありません

  • ラ・リーガ(スペイン):1966-67シーズンに1回だけ。
  • セリエA(イタリア):1985-86シーズンに1回だけ。
  • リーグ・アン(フランス):一度もなし。
  • ブンデスリーガ(ドイツ):4回あるものの、3クラブ昇格・降格制の下で発生したのは1回だけ(1992-93シーズン)。

このように、他国では現代においてほぼ起きていないのです。
にもかかわらず、プレミアリーグでは2シーズン連続。

この現象は、単なる偶然ではなく、
プレミアリーグとチャンピオンシップの間に広がる「格差」
を示しているのかもしれません。


この流れは続くのか?希望はあるのか?

では、この「昇格即降格」の流れは今後も続くのでしょうか?

実は、来季昇格する可能性が高いクラブには、希望の種が残されています。

  • リーズ・ユナイテッド(2020-21シーズンに9位)
  • バーンリー(2019-20シーズンに10位)
  • シェフィールド・ユナイテッド(同じく2019-20シーズンに9位)※昇格プレーオフを勝ち上がればの話

いずれも、ここ6年以内にプレミアリーグでトップ10入りを果たしており、しかも当時はあのアーセナルとわずか2ポイント差という好成績を収めていました。

今季、ノッティンガム・フォレストは、昨季17位から一気にチャンピオンズリーグ争いに食い込む成長を見せています。

ミッドテーブル(中位)に甘んじていたクラブが、数年で上位争いを繰り広げる──。
そんな例も、プレミアリーグには存在するのです。

たとえ1クラブでも残留を果たすことができれば、
プレミアリーグの競争力にも、新たな希望が生まれるでしょう。


まとめ|求められる「再建」と「サバイバル力」

2年連続での昇格組全滅。
それは単なる統計上の事実ではなく、プレミアリーグの構造に警鐘を鳴らす現象です。

  • チャンピオンシップとプレミアリーグの格差拡大
  • 昇格組の準備不足
  • 既存勢力の強化と「壁」

これらの要因が複雑に絡み合い、今の状況を生み出しています。

来季昇格してくるクラブたちには、
過去2シーズンの失敗を教訓にし、したたかに生き残る術を見つけてほしいものです。

彼らの「挑戦」は、プレミアリーグ全体にとっても大きな意味を持つでしょう。
競争があるからこそ、リーグは輝きます。
そして、奇跡は、必ずしも遠いものではありません。

新たなシーズンで、私たちはきっと、
新たなヒーローたちの物語に出会えるはずです。


出典:The Analyst 「Premier League Promoted Sides Relegation Championship」(https://theanalyst.com/eu/2025/04/premier-league-promoted-sides-relegation-championship)

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