2025年4月、アストン・ヴィラが再びFAカップの頂点を目指す時が来ました。指揮官ウナイ・エメリの卓越した采配術、そして“復活”を遂げつつあるマーカス・ラッシュフォードの存在が、このクラブを2015年以来となるFAカップ決勝の舞台へと導こうとしています。
では、なぜヴィラはここまで強くなったのか？その舞台裏には、スペイン人指揮官による「知的かつ情熱的なマネジメント」、そしてラッシュフォードという“失われたスター”の再生劇がありました。
🎩エメリ流マネジメント──「コイントス」のような采配？
ウナイ・エメリ監督のチームマネジメントは、一言で言えば「緊張感の演出」にあります。試合前日にスタメンを伝える日もあれば、ホテルを出る30分前に発表することもあり、選手たちは常に予測不能な状況に置かれています。選手のひとり、モーガン・ロジャースはそのスタイルを「まるでコイントス」と形容しました。
この不可解とも思えるエメリの采配ですが、実は“競争心”と“集中力”を高めるための巧妙な仕掛けでもあるのです。誰が先発で誰がベンチか、それは直前まで分からない──だからこそ、練習でのパフォーマンスがより重要になる。エメリのチームが一戦一戦でエネルギッシュなのは、偶然ではありません。
⚔️注目のスタメン争い──ラッシュフォード vs ワトキンス
そんなエメリの下で、今最も注目されているのが、マーカス・ラッシュフォードとオリー・ワトキンスの先発争いです。FAカップ準決勝のクリスタル・パレス戦において、スタメン発表の瞬間、サポーターたちが最も注目するのはこのポジション争いでしょう。
ここ9試合で7試合に先発し、4ゴールを挙げているラッシュフォード。一方で、ワトキンスは直近3試合のうち1試合でゴールを決め、クラブ通算74得点でレジェンド、アグボンラホールに並びました。いずれもクラブの成功に不可欠な存在ですが、エメリはこの2人を同時起用するという大胆な戦術も模索しています。
最後に2トップを組んだのは6週間前のチャンピオンズリーグ、クラブ・ブルッヘ戦。再びこのコンビが爆発するのか、注目です。
🔥復活する“輝き”──ラッシュフォード、あの頃の輝きを再び
マンチェスター・ユナイテッドから冬に加入したラッシュフォードは、正直なところ“試合勘”が欠けていました。移籍前2か月で先発はわずか2試合。かつての輝きが色褪せていたのは否めません。
しかし、27歳の彼は“再起”を誓い、休日返上でのトレーニングに励み、サットン・ユナイテッドという地元クラブで個別トレーニングまで受けるなど、徹底的なリハビリを行ってきました。
その成果は、パリ・サンジェルマンとの一戦で最高潮に達します。ウィリアン・パチョとマルキーニョスの間を切り裂くドリブル、ティーレマンスの得点に繋がるプレー、そしてヴィティーニャを交わしてのエズリ・コンサへの絶妙なアシスト──これらすべてが、「かつてのラッシュフォード」を彷彿とさせるものでした。
さらに火曜日に行われたエティハドでのマンチェスターシティ戦では、開始17秒でポスト直撃のシュートを放ち、冷静なPKで得点を重ねるなど、その存在感は日に日に増しています。
🧠信頼と尊敬──エメリとラッシュフォードの絆
エメリはこう語ります。
「彼には本当に満足している。とても良いプレーをしているよ。もっと続けてほしい。土曜もまた、私たちを助けてくれるといいね」
この言葉に表れているように、両者の間には確かな信頼関係が育まれています。ラッシュフォードもある現役選手から「エメリはファーガソンやヴェンゲル級のエリート監督」と評されたことをきっかけに、彼との仕事に大きな期待を抱いたそうです。
🧩分厚い選手層とエメリのローテーション戦略
アストン・ヴィラは今季、冬の移籍市場で積極的な補強を行いました。マルコ・アセンシオ、アクセル・ディサシ、ドニエル・マレン、アンドレス・ガルシアといった実力者たちが加入したことで、選手層は格段に厚くなりました。
この状況に対し、エメリは明確なメッセージを選手たちに送っています。
「出場機会に一喜一憂する時間はない。なぜなら、私たちはまだ3つの大会を戦っている」
モーガン・ロジャースが語るこの言葉こそ、エメリの哲学そのもの。すべての選手が準備を怠らず、チームの目標のために戦う──この意識が、ヴィラの今季の快進撃を支えているのです。
🏆準決勝へ──ティーレマンス、マルティネス、ロジャースも奮闘中
ヴィラは今季、すでに52試合を戦い抜いてきました。ティーレマンスはそのうち50試合に先発出場し、プレミアリーグでは全試合でスタメン。GKエミリアーノ・マルティネスやロジャースも48試合に出場するなど、主力たちの献身がチームを支えています。
ティーレマンスといえば、2021年にレスターをFAカップ制覇へ導いた“伝説のゴール”を決めた男。そんな彼が再びウェンブリーの地で輝くことができるのかも、大きな見どころです。
💰ラッシュフォードの未来は？
ラッシュフォードには、4000万ポンドの買い取りオプションが設定されています。現在の契約はユナイテッドと2028年まで、週給は驚異の37万5000ポンド。アストン・ヴィラがこの条件をどう判断するかはまだ分かりません。
しかし少なくとも現時点では、ユナイテッドで“扱いに困っていた存在”が、ヴィラでは“希望の光”となっているのは間違いありません。
⚽今週末、再び“魔法”は起きるのか？
FAカップ準々決勝でプレストン相手に2得点を挙げ、以降スタメンに定着したラッシュフォード。3月のイングランド代表戦でも先発し、代表復帰を果たした彼が、再びウェンブリーでその魔法を見せる瞬間が近づいています。
勝てば、ヴィラにとって2015年以来のFAカップ決勝進出。エメリの采配、ラッシュフォードの決意、そしてチーム全体の団結力が、その夢を現実に変えるかもしれません。
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