2024-25シーズンのUEFAチャンピオンズリーグもいよいよ佳境。準決勝ではアーセナルとパリ・サンジェルマン(以下PSG)が激突します。
両者とも、過去にCLタイトルを手にしたことはありません。この世紀の一戦は、歴史を塗り替えるための挑戦です。
今回は、欧州データ専門メディア「The Analyst」の記事(出典)を参考に、試合の勝敗を大きく左右しうる6つのキーポイントを詳しくご紹介します。
1️⃣ サカ vs メンデス:右サイドの攻防が勝負を分ける
アーセナルの攻撃の核と言える存在が、若きエース、ブカヨ・サカ。セットプレーからの得点、ドリブル、スルーパスへの反応力、そして冷静なフィニッシュと、すべてにおいて一級品です。
今季のアーセナルは、CLで全攻撃の40%以上を右サイドから展開しており、サカはその中心人物。10月に行われた両者の直接対決でも、60.4%の攻撃が右から行われました。
そのサカを迎え撃つのが、PSGの左SBヌーノ・メンデス。前回は序盤こそサカに押し込まれましたが、その後は見事に修正し、時には攻撃参加で逆にサカを自陣に引き込む活躍も見せました。
このサイドの攻防が試合の流れを大きく左右することは間違いありません。
2️⃣ ルイス=スケリー vs PSGの右サイド
アーセナル期待の17歳、マイルズ・ルイス=スケリー。準々決勝でロドリゴを抑え込んだ彼に、今度はCL随一の突破力を誇るPSGの右サイドが襲いかかります。
PSGの攻撃の約41%は右サイドから。右SBのアクラフ・ハキミは今季CLで2得点5アシストと、ディフェンダーとして異例の攻撃貢献を見せています。
さらにルイス・エンリケ監督は、毎試合スタメンを流動的に変更。右WG候補には、ドゥエ、クヴァラツヘリア、デンベレ、バルコラといったドリブル自慢が名を連ねますが、彼らは全員、1試合平均で2回以上の成功ドリブルを記録しています。
しかしルイス=スケリーの守備力も侮れません。今季公式戦でドリブル突破を許したのはわずか1回(CLとプレミアリーグ合わせて1488分の出場)。この「鋼の守備」とPSGのドリブラー軍団の激突は、文字通り火花を散らす戦いとなるでしょう。
3️⃣ パーティ不在…アーセナル中盤に生じる“隙”
アーセナルにとって痛恨なのが、守備の要トーマス・パーティの出場停止。彼の読みとカバー力は、PSGのポゼッションサッカーに対抗するために不可欠な要素でした。
代役候補はミケル・メリーノですが、前方での起用が続いており、代わりにデクラン・ライスがより守備的な位置に下がる可能性も。
一方、PSGの中盤を支えるのは、ポルトガル人コンビのヴィティーニャとジョアン・ネヴェス。ネヴェスは90分あたり3.5回のタックル(CL)で守備面でも貢献し、ヴィティーニャは試合をコントロールするレジスタ的存在で、今季、PSGのシュートに至るビルドアップへの関与数が最多(193回)となっています
ポゼッションでは、バイエルンに次ぐ63.8%のボール支配率を誇るPSG。1試合平均パス数(668.2)、成功パス数(598.4)ではトップ。さらに、ファイナルサードでのパス(199.6)、攻撃ハーフでのパス(379)、敵ボックス内でのタッチ数(39.4)でも上位に位置しています。
この局面でパーティを欠くアーセナルがどこまで踏ん張れるかがカギです。
4️⃣ ラヤ vs ドンナルンマ:GKの“静かなる”決戦
このビッグマッチには、ゴールキーパーという「最後の砦」の戦いも存在します。
アーセナルのダビド・ラヤは、被シュート期待失点(xGOT)10.4に対し、実失点はわずか6点。CL全体でも2番目に高い抑止率を記録しており、極めて堅実なセービングを見せています。
対するPSGの守護神ジャンルイジ・ドンナルンマもCLでのビッグセーブを連発。PK戦での神がかり的な活躍は記憶に新しく、試合終盤での集中力の高さも特筆すべき点です。
また、両者ともにビルドアップ能力も重要視されていますが、ラヤの方がより長いキックでの展開に長けています。一方、ドンナルンマはプレス耐性に課題があり、アーセナルの前線からの圧力が大きな試練となるでしょう。
5️⃣ PSG最大の弱点:セットプレー
ここに来て、PSGの最も明確な弱点が浮かび上がっています。それが、セットプレーからの失点です。
リーグ・アンでの10失点(オウンゴール除く)はリーグワースト5位タイ。全失点の実に32.3%がセットプレー絡みとなっています。
特に弱いのがコーナーキックからの守備。ニアでの競り合いやファーからの折り返しに対応できず、失点が目立ちます。直近のニース戦(1-3)でもセットプレーから失点し、マルキーニョスは試合後、「アーセナル相手にはこの分野を改善しなければならない」と語っています。
対するアーセナルは、10月の直接対決でサカがFKを直接決めるなど、セットプレーの強さが際立っています。仮にガブリエウ・マガリャンイスが不在でも、他に脅威となる選手は揃っており、PSGにとっては不安材料です。
6️⃣ 試合展開は「耐えて勝つ」か「支配して圧す」か?
戦術的な面から見て、この対戦は**“守って勝つアーセナル” vs “支配して圧すPSG”**という構図になりそうです。
・アーセナルは前回、ボール保持率35.1%でPSGに勝利
・PSGは今大会最高レベルのボール回しを誇るが、セットプレーやプレス耐性に脆さあり
アーセナルは、少ないチャンスを正確に決め、相手のミスを逃さない「効率のサッカー」が持ち味。対するPSGは、主導権を握り続けることで自分たちのテンポに持ち込む「支配のサッカー」を志向しています。
この“真逆の哲学”がぶつかる90分、どちらが勝利の女神を手繰り寄せるのか――。
◆ おわりに:勝利を手にするのはどちらだ?
この試合は、戦術、個の力、そして「勝ち方」の哲学が激突する、サッカーファン必見の名勝負になること間違いなしです。
・サカ vs メンデスのエリート対決
・鉄壁DFルイス=スケリーがドリブラー軍団を止められるか
・中盤のパーティ不在という試練
・GK同士の静かな名勝負
・そして、セットプレーで泣くのは誰か?
一瞬のミスが命取り、一手の閃きが決定打になる、そんな一戦に胸が高鳴ります。
📌出典・参考:
The Analyst: Arsenal vs PSG – Six Key Areas That Could Decide Champions League Semi-final
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